言葉も「老化」する ~パワハラという言葉で考えてみる~

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

昼食の調達のために事務所を出たら、通りかかった人に

「九品仏はどちらですか?」

と聞かれました。

そういえば、このブログで2014年に書いた

「世田谷区奥沢・九品仏浄真寺の紅葉」

という記事へのアクセスが、このところ増えてきてるなあ。

そろそろ九品仏浄真寺の紅葉の時期なのですね。

 

さて、前回まで3回に分けて「パワハラで訴える!」について考えてみたのですが、今回は、その番外編です。

パワハラという「言葉」そのものについて。

まずはひとつ、質問です。

(パワハラの話は後から出てきます。)

虹は何色でしょう?

なにいろ、という意味ではなく、虹を構成する色の数は?

という意味です。

答えは・・・

「日本語では7色ということになっている。」です。

虹の色はくっきりと7色に分かれているわけではなく、グラデーションになってます。

連続しているのですね。

それが7色に見えるのは、7色であるとする日本語圏で育っているから。

実は「7色」に必然性はないのです。

「2色」でも構わないのです。

ある部族が、初めて虹を見たとしましょう。

とても美しい!

外側と内側とで色が違う!

外側は暖かい感じがして、内側はクールな感じだ。

よし、虹の外側の色を「アカ」と呼ぼう!

内側の色は「アオ」と呼ぼう!

その部族にとって虹は「2色」ということになります。

自然現象である虹の色に「アカ」「アオ」と命名したことによって「虹は2色である」という認識が生まれるのです。

これが「命名」の持つ力なのです。

 

さて、パワハラの話です。

社会現象にも「命名」が起こります。

職場での出来事が原因で調子を崩して辛い思いをする人たちがいる、という現象は、ずいぶん以前からあったはずです。

それらは個々の問題であると認識され、対応の仕方もそれぞれ個別のものであったでしょう。

でも、あるとき誰かが、それらに共通の要素があることに気が付きます。

上司と部下の関係で起こりやすい、とか、物理的な暴力を伴わないことも多い、とか、この現象が多発する職場環境があるらしい、とか。

そして「パワーハラスメント」という命名がなされます。

「パワハラ」という言葉の誕生です。

言葉が誕生すると、人々の認識に変化が起こります。

「これまで私は正体不明のものに苦しめられて来たけれど、それはパワハラというものだったんだ! 私の苦しみには名前があったんだ!」

「職場にはパワハラという問題がある。私は管理職としてこの問題に対応しなければならない。まずは私自身が勉強して、その後、職場研修を企画しよう。」

といった具合です。

メディアでも取り上げられることが増えて、社会全体が問題意識を持つようになります。

いろいろな研究成果が発表されたりもします。

「パワハラ」という言葉の成長期~成熟期、と言えるかもしれません。

この時期には、ちょっと不思議なことも起こります。

「職場でこんなことがありました。これはパワハラでしょうか?」

という質問をする人が現れるのです。

これのどこが「不思議」なのか、疑問に思われるかもしれません。

では、ちょっと虹の話に戻ってみましょう。

虹の色を「アカ」、「アオ」と命名した部族で、ある時一人のメンバーが

「虹の真ん中あたりの色はアカなのかアオなのか、どっちだ?」

という疑問を持ったとしましょう。

さて、答えは?

「実は質問自体がナンセンスである。」

というのが答えです。

「アカ」も「アオ」も自分たちが造り出した「言葉」であって、自然現象そのものではありません。

虹を2色であると捉える認識は絶対的なものではなくて、「言葉」から生まれた「文化」のようなものです。

自然現象を文化にムリヤリ当てはめることには、そもそも無理があるのです。

「パワハラ」も同じです。

言葉が生まれてしまったばっかりに、

「パワハラなのか、そうでないのか」

という二者択一の見方が蔓延してしまうのですね。

虹の色に関しては、もしかしたら何年にもわたる論争が展開されて決着はつかないかもしれません。

もしかしたら、

「虹は実は3色なのかもしれない・・」

ということになり、虹の真ん中の色に「イエロ」という名前が付けられるかも。

「これはパワハラでしょうか?」

という質問も同じようなものかもしれない、と思います。

論争が展開されるも結論は出ず、これは新しく命名した方がいいかも、ということで、「○○ハラ」という言葉が誕生したりするのでしょう。

(マタハラ、アカハラといった言葉をイメージしてみて下さい。)

さて、成長~成熟の後には老化がやってきます。

一世を風靡した「パワハラ」という言葉も陳腐化します。

誰もが気軽に使うようになって、言葉に重みがなくなって来ます。

ハラスメントの匂いの全くないお酒の席などで

「オマエ、ダメなやつだなあ。」

「センパイ、それ、パワハラですよ!(笑)」

といった会話が頻繁になされるようになります。

こうなると

「パワハラを受けたんです!」

という真摯な訴えに対しても

「最近は何でもかんでもパワハラにするのが流行だからね。」

という反応が返ってくることも多くなってきます。

「パワハラ」という言葉は、たぶん今はまだ老化し切ってはいないように思います。

でも、何十年後かには、

「2001年~20○○年ごろには『パワハラ』が社会問題となった。」

という解説がなされたりするのだろうな、と思います。

 

私は街の法律職です。社会学者ではありません。

今日のお話も

「こんな考え方もあるのだな」

という程度に気楽に読んでいただければ、と思います。

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

世田谷区奥沢・九品仏浄真寺の紅葉

自分の方が間違ってるのかな?・・・と考えてしまう癖。

★「パワハラで訴える!」が難しい理由①

★「パワハラで訴える!」が難しい理由②

★「パワハラで訴える!」が難しい理由③

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