「そもそも」を考えてみよう⑧ 「お金の問題じゃないんです!」

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

暑いですねえ~。

暑すぎます。

今日は入院中の被後見人の方を訪問しようかな、と思っていたのだけど、明日に回すことにします。

この暑さ、ちょっとキケンを感じるので・・・。

 

現在の事務所の玄関の手拭い飾りはカラフルなソフトクリームです。

夏らしくて、いい感じでしょ。

 

さて、今日も前回同様、司法書士と相談者の会話からどうぞ。

 

相談者:友人がお金を返さないんです!

司法書士:いくら貸しました?

相談者:5万円です。訴えたいんです!

司法書士:まずは、もう少し詳しくお話を・・・

相談者:先生、代理人になって訴訟を起こしていただけますよね!?

司法書士:借用書は書いてもらってますか?

相談者:ありません! まさか返さないなんて思いませんから!

司法書士:何か証拠になるものは・・・

相談者:メールのやり取りが残ってます!

司法書士:それだったら、ご自分で頑張って本人訴訟をやってみられたら・・・

相談者:電話の録音も取ってあります! 言い逃れはできません!

司法書士:簡易裁判所で定型の訴状の用紙がもらえますから、それを・・・

相談者:いや、専門家にお願いして徹底的にやりたいんです!

司法書士:5万円を取り戻すために代理人をつけるのは・・・

相談者:確実に勝ちたいんです! 懲らしめてやりたいんです!

司法書士:当職の場合、訴訟代理の着手金の最低額は4万円で・・・

相談者:はい!

司法書士:成功報酬が10パーセントで・・・

相談者:はい!

司法書士:裁判所に納める印紙や切手で5000円ぐらいはかかりますし・・・

相談者:はい!

司法書士:つまり、費用だけで5万円になってしまうということで・・・

相談者:いいんです! 引き受けていただけますよね!?

司法書士:いや、5万円を取り戻すのに5万円をかけるのは、ちょっと・・・

相談者:いいんです!

司法書士:・・・よくないと思う(心の声)・・・

相談者:お金の問題じゃないんです!!

司法書士:・・・・・。

 

いかがでしょう?

相談を受けている司法書士は困ってしまっていますね。

5万円を取り戻すために5万円の費用をかけるって、アリでしょうか?

あり得ない、という方もいらっしゃるでしょうし、場合によってはアリかも、という方もいらっしゃるかと思います。

では「アリ」だという方の、「場合」とは何でしょうか。

いろいろと考えられると思いますが、いちばん多いのは「制裁」なのではないでしょうか。

怒りやら、理不尽な思いやら、裏切られた悔しさやら、もろもろの、行き場のない感情たち。

それらが消化できずに膨らんで、制裁を加えてやりたい、という思いとなり、「訴えてやる!」という形を取るのですね。

実際に

「法廷に引きずり出してやりたいんです! それが目的です!」

とおっしゃる方も、結構おられます。

お話を伺っていて

「気持ちはわかるなあ・・・」

と思うことも多いです。

でも・・・

こういうご相談があった場合に私はどうするか、というと、基本的には「お断りする」ということになります。

5万円を取り戻すのに5万円をかけるのは合理的ではありません。

でも、お断りする理由は合理・不合理の問題だけではありません。

民事訴訟の「そもそも」の問題なのです。

民法や民事訴訟法の考え方の根本にあるのは「損害の回復」であって、「制裁」ではないのです。

民事訴訟の本質は

「訴えてやる! 制裁を加えてやる!」

ではなく、

「裁判所という国家機関を使って損害を回復しよう」

ということなのです。

5万円を取り戻すために5万円をかける、というのでは、損害を取り戻したことにはなりません。

「それで気が済むんだったらいいじゃないですか!」

とおっしゃる方もおられるかもしれませんが、法律家としては、「気が済むこと」に対して協力することはできない、と私は考えています。

 

なるほど、と思っていただけましたら幸いです。

 

 

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2017年8月9日 | カテゴリー : 訴訟・裁判 | 投稿者 : Kazuko Kataoka