「そもそも」を考えてみよう① 「親の入院費を親の口座からおろしたい。」

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

↑は今読んでる本です。

他分野の専門家の本って、刺激になります。

この本も、「へえ~」がぎっしりで、楽しいです。

必要に迫られてではなく、単純に「おもしろそう!」からの読書って、いいですよね。

特に目的もなくぶらっと書店へ立ち寄って、目に留まった本を手に取ってみる。

この上ない楽しみです。

情報はネットで、の時代みたいだけど、本屋さんって、絶対になくならないと思います。

でも、

「今すぐに必要な情報はネットで」

「困ったことが起きたらとりあえずネット検索」

というのも時代の流れのようですね。

私が書いているこのブログの記事たちも、

「発生した問題を解決する手がかりが欲しい!」

という動機で読んでくださる方が多いようです。

「発生した問題」が、どのようなものであるかは、このブログへ来られた方の「検索ワード」を見ればある程度はわかります。

そして、それらには類似点・共通点があることが多い。

つまり、世の中のあちこちで同じような問題が起こっているということ。

そして、アドバイスを欲しい方がたくさんいる、ということ。

それぞれが抱えるトラブルは、それぞれに個性のあるものですから、具体的な対処法もまた、それに応じたものになります。

でも、トラブルの類型により、「そもそも」というものがあって、この「そもそも」を理解することが解決に向けての最初の一歩となるように思います。

 

ここからが、ようやく今日の本題です。

親が突然入院した。

入院費を支払わなくてはならない。

でも、親は入院中なのだから銀行に行けない。

どうしたらいい?

この状況で焦ったあなたは、ネットで検索を始めることでしょう。

たとえば

「親の口座からお金をおろす方法」

「親のキャッシュカードの暗証番号がわからない時は」

「母 入院 銀行 引き出し」

などと。

でも、いくら検索を繰り返しても「これだ!」という解決法にたどりつけない。

これは、「そもそも」の理解が欠けている可能性が高いのです。

「親の口座からお金をおろす方法」

という検索をする背景には次のような論理があるのだと思います。

「親の入院費なのだから親のお金で払うべき。」

「銀行へ行けば親のお金がある。だからそれをおろして使えばいい。」

「でも、具体的にどうすればよいかわからないから調べてみよう。」

どこか間違ってるの?

いや、間違っている、というよりは「分解」が足りていないのです。

実は、「入院費を支払う」ということと、「銀行でお金をおろす」ということは、分けて考えなければならないのです。

入院費はもちろん支払わなければなりません。

「銀行に行けないから支払えない」は理由になりません。

一方、銀行との取引は、「本人の入院費を支払うため」であったとしても、本人以外が行うことはできません。

いや、「本人以外はできない」という表現は誤解を招くかもしれません。

正確にいうと「本人の意思に基づいて」でなければ行うことができない、ということです。

逆に言えば、「本人の意思に基づいて」いれば、必ずしも本人が窓口に出向かなくても引き出しが可能、ということ。

「本人の意思に基づく」って、何だか堅苦しい表現ですが、簡単に言えば「本人に頼まれたのであればOK」ということ。

それならば、銀行の窓口に行って「親から頼まれたんです。」と言えばよいのか、というと、やはりそうはいきません。

銀行としては「本当に頼まれたのか?」を確認する必要があります。

アタリマエですよね。

そこで「委任状」だとか「本人確認」だとかいう話になるのですね。

具体的な確認方法は金融機関によって異なると思いますが、「本人の意思に基づいている」ことが確認できればよし、ということです。

ちなみに、親からキャッシュカードを渡されて「これで入院費をおろしてきて」と頼まれて、暗証番号を教えられたのであれば、それは「親の意思に基づく」ことになるのでOK、ということ。

(そのキャッシュカードで入院費よりも多い金額を引き出した、という場合は、また別の問題が生じますが。)

ここまで、ご理解いただけたでしょうか?

では、先へ進みましょう。

親が意識不明の状態であったらどうなるか、という問題です。

意識不明の状態では「入院費をおろしてくるよう頼む」ということはできません。

難しくいうと、「意思に基づく」ということ自体が観念できない、ということ。

この状態では銀行との取引はできません。

意思表示ができないのですから。

すなわち「お金はおろせない」ということです。

息子が銀行の窓口に行って「親の入院費が必要なんです!」と、いくら訴えてもダメです。

銀行にとっては「お金の使い道」が問題なのではなく、「本人の意思に基づいているかどうか」が問題なのです。

この状況を何とかしなければ、ということで、「意識不明の親の口座から引き出す方法」などとネットで検索しても、あまり意味はありません。

そもそも、親の銀行預金は親のものです。親の口座に関する取引は、親自身でなければ行えないのです。

では、どうするか。

法律に則って「法定代理人」としての権限を与えてもらう必要があるのです。

親自身が自分の意思で権限を与えることが出来ないのであれば、法律の規定を使うしかありません。

それが「成年後見」の制度です。

親が入院していて、意識不明で、親の口座から入院費を支払いたい、という場合、成年後見制度を使う以外の裏ワザなど存在しないのです。

今日の記事は、少し長くなってしまいました。

参考になりましたでしょうか?

これからも、折に触れていろいろな問題の「そもそも」を考えてみたいと思ってます。

 

【2019年8月18日追記】

司法書士などの専門職が成年後見人になった場合には報酬が発生します。

この報酬が具体的にいくらぐらいになるのか、どうやって決まるのか、気になる方は多いと思います。

これについては 「成年後見人の報酬のこと。【2019年8月追記あり】」 という記事で詳しく解説しています。

よろしかったら参考になさってください。 → こちら

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

★成年後見人の報酬のこと。【2019年8月追記あり】

★「そもそも」を考えてみよう⑨ 「親に遺言を書かせたいんです。」

★超入門② 口約束は守らなくてもいい?

★超入門③ 民事責任と刑事責任を区別しよう。

★成年後見制度に「巻き込まれた」のだとしても。

★成年後見ジャンルの過去記事の見直しを進めていこうと考えています。

★事務所内部を大公開!

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2016年8月11日 | カテゴリー : 成年後見 | 投稿者 : Kazuko Kataoka