こんにちは。司法書士の片岡和子です。
ペチュニアがいい感じに枝垂れて咲いてます。
ハンギングならではの景色なのだけど・・・
花が全部明るい方を向いて咲いているため、部屋の中からは花の裏側しか見えないのです。
ちょっと悲しい・・・。
さて、今日は成年後見の話題です。
書くのは難しいテーマなのだけど頑張ってみます。
家庭裁判所の後見部門へ所用で出向くと、書記官さんたちが忙しく働いておられます。
電話もあちこちで鳴ります。
もちろん内容はわかりませんが、苦情対応なのかな? という雰囲気が伝わってくることも。
窓口で来訪者と書記官さんが押し問答になっているのを見かけることもあります。
時には内容が聞こえちゃうこともあって・・・
例えば・・・
「妹が母を勝手に老人ホームへ入れました。あまりよくない施設のようで心配だし、お金がどうなっているかもわからないので、後見の申立てをして専門職の方に後見人になっていただきました。さっそく後見人にお会いして、母を私の家に近い老人ホームへ移す手配をするようお願いしたのですが動いてくれません。これでは何のために母に後見人をつけたのかわかりません。何とかしてください!」
みたいな。
(「聞こえたそのまま」ではなくて、アレンジしてあります、もちろん。)
これは対応する側も困るだろうなあ・・・です。
成年後見人は家庭裁判所の監督下にありますから、後見人が間違った行動を取れば、裁判所は指導をしなければなりません。
場合によっては解任することも考えなければなりません。
「そうそう、そうでしょ、間違ってるんだから指導してよ! というか後見人を他の人に交代させて欲しいんだけど!」という声が聞こえて来そうです。
でもちょっと待って、なのです。
「間違ってる」というのは「正しくない」ってことですよね。
じゃあ、何をもって「正しい」というのか、という話です。
「妹が母を勝手に・・・」と言って家庭裁判所へ押しかけて来た人は、何の根拠も示さずに「私は正しい、なぜなら私が正しいから」と言ってるのと同じです。
そもそも「母にふさわしい老人ホームはどこか」という問題には「正解」がないと思うのです。
「正解」が存在しないのだから「間違い」もないのですよねえ・・・。
(虐待が行われている、なんて場合は話が別です、もちろん。)
こういう場面で、家庭裁判所の方々が「後見人の裁量の範囲の問題ですので」という説明をすることがあります。
これ、苦情を持ち込む人にとっては、なかなか刺激的な言葉だと思います。
「後見人の価値観で好き勝手にやってOK、ってことですか? あり得ない!」みたいに感じるかも。
でも、そうではないのですよねえ。
正解のない問題に取り組んで、何とか最適解を導き出そうとする後見人の努力に対して、裁判所から「Aホームを退去してBホームへ移るよう被後見人を説得しなさい、息子さんの要望だから」みたいなことは言えるはずがない、ってことなのですけど。
「全然働かない、話を聞こうともしない!」と思われてる後見人が、実は、兄と妹のどちらが母親のことを真剣に考えてるか、敏感に感じ取ってたりもするのです。
「費用の安い施設へ母親を移して財産の目減りを防ぎ、将来の相続での取り分を多く残したい」が息子のホンネかもしれないなあ・・・なんてことを考えたり。
そんな具合なので、こういう類いの苦情を家庭裁判所へ持ち込んでも、あまり意味はないのです。
相手にされなくてアタリマエ、ってことです。
さて。
ここまでは「正解のない問題」のお話でした。
ここからは「正解のある問題」のお話。
成年後見人の行動が「間違っている」のならば、家庭裁判所は動きます。
典型的なのは横領ですよね。
これはもう、一発退場! 解任!! の世界です。
でも、そういう極端な場面でなくても「間違っている」と言える場合があります。
「被後見人のために当然行うべきことがなされていない」という場合です。
いろいろとあるのですが、私は「期限までに支払をしない」が最も大きな問題だと考えています。
後見人の仕事のキモは「被後見人の家計簿をきちんとつける。予算を立てる。遅れずに支払をする。」だと思っているのです。
ちょっと例えは良くないかもしれませんが、「真面目な主婦」みたいな感じ。
(私自身がそういうタイプだ、ってのもありまして。)
財産管理偏重だというご批判はあるかもしれません。
でも、施設利用料を払う、入院費を払う、その他いろんな支払をする、これが後見人の根本的な存在意義だと思うのです。
これがきちんと行われないのは「正しくない」、すなわち「間違っている」ということになります。
被後見人のために働いていないのですから。
実は、こんな話を持ち出したのには意味があって、後見人がきちんと仕事をしていない兆候が最初に表われるのが「支払の遅れ」なのでは、と感じているのです。
それも、「横領の兆候のようなもの」ではなくて、「体調不良」などが原因の場合があるのです。
あるいは、「案件を多数抱えていて手が回っていない」とか。
「それなら仕方がないのでは?」という考えは通らない、と私は思います。
被後見人ご本人に不利益が及ぶのですから、それはやはり「間違っている」のです。
なので、介護施設や医療関係の方で、「後見人がついているのに支払がされない」といったことがあれば、「苦情」というよりは「情報提供」として家庭裁判所へ伝えていただければよいのでは、と思います。
どのように対応するかは裁判所側の判断ですが、何かしら考えてくれるはずです。
(私自身、こういうケースに「追加の後見人」としてサポートに入り、最終的に全ての後見事務を引き継いだことがあります。実質的な「交代」ってことですね。)
いかがでしょう。
とりとめのない話になってしまいましたが、参考になりましたら幸いです。
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