こんにちは。司法書士の片岡和子です。
1月も後半。お正月気分も終わり。
事務所玄関のてぬぐい飾りも掛け替えました。
「しろくまスキー」、楽しそうでしょ♪
(私はスキー全然できないんだけど。)
さて、今日は「勝手に深読み」。
民法940条1項のお話です。
さっそく条文を挙げてみましょう。
民法940条1項
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなけらばならない。
ここでの「相続の放棄」は「事実上の相続放棄」ではなく「法律上の相続放棄」のことです。
家庭裁判所で正式な手続きをする相続放棄です。
これが受理されると相続人ではなくなりますから、財産はもらえないけれど債務も受け継がない、ということになります。
なので、プラスの財産が少なくて借金が多い場合によく利用されます。
(単に「相続人の一人に遺産を集中させたい」という場合には、話し合いによって「事実上の相続放棄」をすればよいため、法律上の相続放棄をする必要はないのです。)
私が相談を受けた例では、「とにかく関わりたくない、関係ない立場になりたい」というものもありました。
法律上の相続放棄をすれば相続人ではなくなるのですから、遺産分けの話し合いやら何やらに参加しなくて済む、不仲な他の相続人たちと関わらなくて済む、というワケです。
(仏壇やお墓は相続放棄とは別問題ですので、全く関わらないで済むようになる、とは言い切れないのですが。)
誰かが相続放棄をすると、その他の相続人たちが遺産の管理をしつつ、遺産分けの話し合いを進めていくことになります。
相続人が1名だけで、その相続人が相続放棄をした場合や、複数の相続人全員が相続放棄をした場合には、相続人がいなくなってしまう・・・のではありません。
次順位の者が相続人となります。
例を挙げてみましょう。
<Aさんが亡くなった。妻のBさんはずっと前に亡くなっていて、相続人は息子のCさんのみ>
この場合にCさんが相続放棄をすると、Aさんの親御さんが相続人となります。
親御さんが既に亡くなっている場合には祖父母が相続人となります。
ご先祖様が既に全員亡くなっている場合には、Aさんのきょうだいが相続人になります。
仮にAさんのご先祖様が全員他界していて、Aさんに弟Dさんがいたとしましょう。
Cさんが相続放棄をしたことによって、DさんがAさんの相続人となるのです。
さて、ここで民法940条1項を改めて読んでみましょう。
民法940条1項
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
Cさんは、Dさんが相続財産の管理を始めるまでは管理を続けなくてはならない、ってこと。
「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」と言っていますから、注意義務は重くありません。
自分の物を管理するのと同程度でOK、ってことです。
例えば預金通帳であれば、紛失しないように保管しておいて後日Dさんに引き渡せばよい、といった感じです。
さて、ここからが深読みポイントです。
Aさんの遺産が「遠方の空き家。廃屋状態で、台風が来れば倒壊して近所に被害を与えるかも」だったとしたらどうでしょう。
Cさんは、Dさんが管理を開始するまでの間、管理をしなくちゃいけません。
もしかしたら、この廃屋を相続するのがイヤで、Cさんは相続放棄をしたのかもしれませんね。
でも、だからといって、何もせず放置してよい、ということにはなりません。
管理をする必要があるのです。
求められる「管理」がどの程度なのか、難しい問題ですが、少なくとも「相続放棄したんだから何の関係もない!」では済まないことは確かです。
もしかしたら、Dさんも相続放棄をするかもしれませんね。
そしたらどうなるのか?・・・これはまた別の機会にお話できれば、と思います。
この民法940条1項は、これまではそれほど重要な条文だとは考えられて来なかったと思います。
でも、今後は状況が変わって来るかもしれません。
この条文の出番が増えてくるかもしれないです。
注目しているところです。
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