疎遠だったからこそ要求してくる。 ~相続のお話~

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

ベランダのビオラちゃんが次々と咲くので、どんどん部屋に取り込んで楽しんでます。

春満開ですねえ。

 

今日は相続のお話です。

遺産分割の場面では、往々にして

「信じられないようなこと」が起こります。

典型的なのが、

「これまで何の関わりもなかった人物が突然権利を主張する」

というもの。

事例をあげてみましょう。

(実際の事例そのものではなく、アレンジしてあります)

 

未婚で子供もいない伯母が亡くなった。

生前あれこれと世話をしてきたのは姪っ子のうちの2名。

伯母は遺言を残していなかったので、遺産分割の話し合いをしなければならない。

相続人は甥・姪合わせて全部で7名。

「伯母さんのために頑張った二人で遺産は分ければいいよ。」

という話が進んでいたけれど、相続人のうちの一人であるAと連絡が取れない。

誰とも付き合いがなく、消息不明。

このままでは相続の手続きができない。

姪っ子たちは苦労してAの所在を突き止め、手紙を送った。

すると早速返事があり、

「法定相続分を取得したい。まずは遺産の内容を開示せよ。」

とのこと。

姪っ子たちは遺産目録を作成して送った。

すると今度は

「通帳のコピーを送れ。」

と言う。

要求されるままにコピーを送ったところ、

「使途不明金がある。正当な支出だというなら領収書を見せていただきたい。」

という返事が返ってきた。

姪っ子たちは驚いてしまった。

 

いかがでしょう。

「ひどい!」とお感じになりますか?

実は、こういったことを言ってくる相続人は

「特に深く考えているわけではない」

という場合があるのです。

法律に則って処理を進めているだけなのです。

この事例のAも、そうかもしれません。

伯母が亡くなった。

自分は相続人である。

民法によると自分の法定相続分は○○である。

当然受け取るつもりだが、まずは遺産の内容を把握する必要がある。

・・・という具合に、至極まっとうな思考過程で進めているだけ、なのかもしれないのです。

亡くなった伯母さんと交流のあった相続人たちにとっては

「いとこたちの中で、BちゃんとCちゃんが頑張ってくれたよね。」

「伯母さんの穏やかな老後はBちゃんとCちゃんのおかげだよね。」

「うん、自分たちは何もできなかったよね。」

「遺産は二人で分けてもらおうね。」

「うん、伯母さんもそれを望んでると思うよ。」

という話になることであっても、

全く交流がなく疎遠だったAにとっては、そんな事情は全く見えていないのですから、遺産分割は単なる「事務処理」なのかもしれないのです。

このAの態度は「ひどい」のでしょうか?

この問いに対する答えは

「それぞれの感じ方、主観の問題である。」

ということになります。

ある人にとっては「信じられないようなこと」であっても、他の人にとっては「普通にやってるだけ」かもしれないのです。

では、A以外の相続人たちは、この事態にどのように対応していけばよいのでしょうか。

これはもう、事務的に淡々と進めていくしかありません。

「ひどいと感じた」としても、それは法律問題ではありません。

感情は切り離すしかないのです。

納得いかない、腹がたつ、やっぱりひどい!

と感じる方への処方箋があります。

「疎遠だったのに要求してくるなんて!」

ではなく、

「疎遠だったからこそ要求してくるのだ。」

と理解することです。

できれば、相続が発生する前から「心づもり」をしておくとよいのです。

「疎遠な人は何かしら要求をしてくるだろう。それが普通のこと。珍しいことではない」

と考えておけば、実際に要求があっても、それは「想定内」のことになります。

想定内の事態であれば、少しは冷静に対応できるでしょう。

もうひとつ、お伝えしておきたいことがあります。

「使途不明金」の問題です。

この問題は実に多いのです。

他の相続人から使い込みを疑われたら誰しも怒りが沸騰することでしょう。

でも、

「介護も何もしなかったのに、そんなこと言うなんて!」

などと騒いでも意味はありません。

「領収書を見せろ」と言われたら「領収書を見せる」という対応をする。

これがベストです。

つまり、相続がらみで支出をした場合には領収書を保管しておくことが必須なのです。

これ、ものすごく大事なことです。

 

以上、参考になりましたら幸いです。

 

 

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2018年4月11日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka