Kさんの案件その後。相続人の中に認知症の方が・・・

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

ポーチュラカ大好き♡

朝咲いて夕方しぼむ。

一日で終わりの花。

でも翌朝には新しい花がたくさん。

「よし、今日もがんばるぞ!」

という気持ちになれます。

 

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挿し芽も簡単。

私の自己流お気楽園芸では

①親株の一部を切り取る

②水を入れたコップに挿しておく

③根が出たら鉢に植える

これだけ。

再生力の強さも好きなんです。

 

さて、今日は

「あとしまつ」のための生命保険金

の続編です。

前回同様、実際の案件そのものではなくアレンジを加えてあります。

その点をご了承の上、お読みください。

 

Kさんが亡くなられた後、ご兄弟のLさんMさんNさんは、Kさんの生命保険金を使って無事に葬儀等を済まされました。

少しほっとしたところで、今度は相続の手続きです。

Kさんは多少の遺産を残されました。

複雑な内容ではありません。

いくらかの銀行預金のみです。

金融機関での相続の手続きは、それぞれ微妙に異なるのですが、「相続人全員が関わる必要がある」という点では、どこも同じです。(金額が少ない場合の例外はあるようですが。)

Kさんの相続人は「ご兄弟全員」です。

Kさんには、ご兄弟がたくさんおられます。

いろいろと尽力されたLさんMさんNさんの3人は、「多数の相続人のうちの3名」でしかありません。

他のご兄弟は全国に散らばっています。

Lさんたちと連絡を取りあっている方もいれば、疎遠になってしまっている方もおられます。

Lさんたちは疎遠になっているご兄弟への連絡を試みました。

その結果・・・

ご兄弟のうちのお一人Oさんが認知症であることがわかったのです。

しかも、かなり進んだ認知症で、「Kさんが亡くなられたこと」も理解できない状態でした。

「自分がKさんの相続人のうちの一人として手続きに参加する必要がある」なんていうことは理解できるはずもない、という状況だったのです。

これでは預金の相続の手続きはできません。

昔は、認知症の方のお子さんなどが「代筆」で書類に記入して手続きを済ませる、なんていうことも行われていたようですが、現在では、そのようなことはできません。

「法律行為をするには、その内容に応じた意思能力がなくてはならない。」という基本的理解が広く定着しているからです。

この状況を打開するためにまず思いつくのは「Oさんに後見人をつけてもらう」ことですが、これは、そう簡単なことではありません。

これまで疎遠だったKさんの相続手続きのためにOさんに後見人をつける・・・

そんな面倒なことをOさんのご家族にお願いしてもよいものか・・・

こんな次第で、Kさんの銀行預金の相続手続きは頓挫してしまいました。

そして、Lさんは私のところへ相談に来られました。

保佐人だったご縁で、この事態を何とかしていただけないだろうか、Oさんのご家族に、私から話をしてみてもらえないか、と。

でも、私にはどうしようもありません。

「元保佐人」には、Kさんの相続に関わる権限はないのです。

では、元保佐人としてではなく、「一司法書士」としてはどうか・・・

これもやっぱりダメです。関わることはできません。

Oさん側に「相続についての話を持ちかける」ということは、「Lさんの代理人として遺産分割協議を申し入れる」ということですから、司法書士が行うことはできないのです。

私はLさんに「弁護士さんに相談するように」と助言しました。

Lさんは、がっかりされていましたが、仕方がありません。

この案件が、その後どうなったかは、わかりません。

ただ、高齢化の進む現代においては珍しくもない、どこででも起きうる状況だということ、心に留めておいていただければ、と思います。

 

【2019年11月13日追記】

民法の改正で「遺産分割前における預貯金の払戻し制度」が創設されました。

これにより、本文中の「金融機関での相続の手続きは、相続人全員が関わる必要がある、という点ではどこも同じ」という部分が正確ではなくなりました。

ただ、この記事の内容の大筋には影響しないと思いますので、そのまま残します。

ご了承ください。

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

★「あとしまつ」のための生命保険金

★スムーズな相続のために⑨ 相続人の中に認知症の人がいる場合

★認知症についての情報はあふれてるけど・・・

★認知症の人は遺言できる?

★認知症独居高齢者の在宅生活の限界について考えてみた。

 

 

2017年7月5日 | カテゴリー : 成年後見 | 投稿者 : Kazuko Kataoka